債務整理における直接面談義務

1 概要

債務整理における直接面談義務とは,債務整理事件については,原則として,弁護士が,依頼者の方に対して直接面談して,重要事項の説明等をしなければならないという義務のことをいいます。

債務整理事件とは,簡単に言うと借金の整理に関する事件であり,そのうち直接面談義務があるのは,任意整理,個人再生,自己破産及び約定残債務のある過払い金返還請求です。

この義務は,日弁連が制定した「債務整理事件処理の規律を定める規程」第3条に規定されています。

2 経緯

以前は,大量の広告を打って,全国から多くの問い合わせを受けて,事務員などを使い,電話のみで債務整理事件を受任し,不適切な事案処理を繰り返すような弁護士が一定数いました。

このような不適切な事案処理は,違法すれすれと評価されるものではありましたが,違法とまではいえず,不適切な事案処理をする弁護士を処分することが容易ではなかったようです。

上述した「債務整理事件処理の規律を定める規程」の第1条にも,「この規程は,過払金返還請求事件を含む債務整理事件が多量に生じている状況において,債務整理事件について一部の弁護士(弁護士法人を含む。…)によって,不適切な勧誘,受任及び法律事務処理並びに不適正かつ不当な額の弁護士報酬の請求又は受領がなされているとの批判がある」と,制定の背景が述べられています。

そこで,平成23年に,債務整理事件において弁護士による直接面談義務が規定されることになりました。

3 直接面談しない弁護士に依頼したときは

しかし,未だに直接面談義務の規定を無視して,債務整理事件の処理を事務員任せにしたり,電話等のみで依頼を受けて依頼者と直接面談しなかったりして,不適切な事案処理を繰り返している弁護士等もいるようです。

そのため,債務整理を依頼する際には十分に注意する必要があります。

直接面談義務を果たさない弁護士は,事案処理が不適切であるなどの問題がある可能性が高いため,自己破産,個人再生,任意整理,残債務がある場合の過払い金返還請求などを,弁護士と直接面談せずに電話等のみで依頼してしまった方は,速やかに他の弁護士に相談するべきでしょう。

 

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自己破産で残すことができる財産

1 自己破産

自己破産がどういう制度か説明するに際して,めぼしい財産を手放す代わりに借金をゼロにする手続きであるとの説明が行われることがあります。

自己破産というと,財産を取られるというイメージをお持ちの方が多いかとは思いますが,法律上及び裁判所の運用上,ある程度の範囲の財産については換価配当の対象とはされていません。

上記の説明では,「ある程度の範囲」を超える財産を指して「めぼしい財産」という言葉を使っています。

 

2 自由財産

それでは,「ある程度の範囲の財産」や「めぼしい財産」とは,具体的にはどのような財産をいうのでしょうか。

破産手続上,換価配当の対象とならない財産のことを自由財産といい,その範囲は破産法で規定されています。

⑴ 現金

まず,99万円以下の現金が自由財産として認められています。

ここで留意すべきは,預貯金の形で持っているお金は,現金ではないという点です。

⑵ 差押禁止財産

つぎに,差押禁止財産も自由財産として認められています。

差押禁止財産は,民事執行法やその他の特別法で定められています。

具体的には,生活に欠くことができない衣服,寝具,家具,台所用品等や技術者等の業務上必要な器具類がこれにあたります。

また,生活保護受給権や失業等給付受給権等も差押禁止財産です。

⑶ 自由財産の拡張

以上が法律で定められている自由財産ですが,個々の破産者の状況によってはこれらに限らず,柔軟に自由財産の範囲を定めるのが相当な場合があります。

そこで,破産法では裁判所が自由財産の範囲を拡張することができると規定しています。

どの範囲まで拡張するかについては,破産者の状況ごとに異なりますが,各裁判所は自由財産の拡張についての原則的な運用の基準を定めていることが一般的です。

たとえば,名古屋地方裁判所では,①預貯金,②生命保険解約返戻金,③自動車,④居住用家屋の敷金債権,⑤電話加入権,⑥退職金債権については,その評価額が20万円以下であった場合には,原則として拡張相当として換価等を行わないとの運用です。

このうち,自動車の評価額については,メーカーが発表している車両本体価格が300万円以下の国産車のうち,初年度登録後7年を経過しているときは,原則として無価値とみなす運用がなされています。

外国産の自動車であったり,初年度登録から年数がそれほど経過していなかったりする場合には査定書等によって評価額を算定し,それが20万円を超えるときは,原則として換価等の対象となります。

 

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