1 介入権
破産すると,事情によっては破産管財人という弁護士が裁判所から選任されます。
破産管財人の職務内容を定めるのは破産法ですが,破産法以外にも「破産管財人」が登場する法律が存在します。
保険法60条は,契約当事者以外の者が死亡保険契約を解除した場合,保険受取人が,解約返戻金相当額を解除した契約当事者以外の者に支払うことで,解除の効力を発生させないことを定めています。
2 条文
(契約当事者以外の者による解除の効力等)
保険法60条① 差押債権者,破産管財人その他の死亡保険契約(第六十三条に規定する保険料積立金があるものに限る。次項及び次条第一項において同じ。)の当事者以外の者で当該死亡保険契約の解除をすることができるもの(次項及び第六十二条において「解除権者」という。)がする当該解除は,保険者がその通知を受けた時から一箇月を経過した日に,その効力を生ずる。
② 保険受取人(前項に規定する通知の時において,保険契約者である者を除き,保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者である者に限る。次項及び次条において「介入権者」という。)が,保険契約者の同意を得て,前項の期間が経過するまでの間に,当該通知の日に当該死亡保険契約の解除の効力が生じたとすれば保険者が解除権者に対して支払うべき金額を解除権者に対して支払い,かつ,保険者に対してその旨の通知をしたときは,同項に規定する解除は,その効力を生じない。
③ 第一項に規定する解除の意思表示が差押えの手続又は保険契約者の破産手続,再生手続若しくは更生手続においてされたものである場合において,介入権者が前項の規定による支払及びその旨の通知をしたときは,当該差押えの手続,破産手続,再生手続又は更生手続との関係おいては,保険者が当該解除により支払うべき金銭の支払をしたものとみなす。
3 制度趣旨
保険契約者が破産したときを例にしますと,解約返戻金を破産財団に組み入れるために,破産管財人は破産者が契約している生命保険を解約することがあります。
しかし,生命保険をいったん解約すると,保険契約者の年齢や健康状況等によっては再度生命保険を契約することが困難となることや死亡保険金の受取人の生活保障が全うされなくなることから,このような事態を避ける必要性があり,介入権制度が創設されました。
4 介入権行使の効果
解約返戻金額が高額であっても,任意に解約返戻金相当額を財団に組み入れることを認めてもらうことによって,破産しても生命保険を残すことは可能な場合があります。
介入権者が保険契約者の同意を得て,一定の期間内に解約返戻金相当額を破産管財人に支払い,保険者に対してその旨の通知をしたとき,契約解除の効力は生じないので,介入権を行使することで,上記内容を強制的に実現することができることとなります。