勤務先の借入についての給与天引き

1 勤務先からの借入について給与天引きされている人が破産や個人再生を行った場合は,給与天引きされている事実はどのように扱われるのでしょうか。

 

2 破産の場合,勤務先からの借入も破産債権ですので,弁護士が受任通知を送付した後になされた給与天引きは偏頗弁済にあたり否認対象行為です(破産法162条1項1号)。

破産手続開始前までに勤務先が天引き分を任意に返還しなければ,裁判所から選任された破産管財人という弁護士が勤務先に対して天引き分のお金の返還請求を行うこととなります。

破産管財人が選任される事件類型だと,裁判所に納める予納金も最低20万円以上となることが通常です。

 

3 個人再生では否認という制度はありませんが,故意に否認対象行為を行うと,不当な目的による申立てとされ,申立てが棄却されるおそれがあります(民事再生法25条4号)。

また,破産したとすれば債権者に配当されたであろう金額以上の金額を返済するという計画案でなければ裁判所に認可されません(清算価値保障原則)。

したがって,弁護士が受任通知を送付した後の給与天引きは否認対象行為となることから,その分の金額は個人再生をする方の財産に上乗せされて計算され,それ以上の金額を返済する計画案を立てることとなります。