債権者名簿に記載しなかった債権

名古屋の弁護士の松山です。

1 破産をし,免責許可決定を得ても免責の効力が及ばない債権を非免責債権と言います。

破産法253条には非免責債権が列挙されており,その中の一つに破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権があります(破産法253条1項6号)。

2 債権者名簿に記載されなかった債権者は,免責に対する異議申立の機会を奪われ,免責に対する防御の機会が完全に失われることから,このような債権を保護する趣旨とされています。

3 上記の趣旨から,破産者があえて債権者名簿に記載しなかった場合だけでなく,破産者が過失によって記載しなかった場合も含むと考えられています。

4 過失の有無の認定には,様々な要素を考慮されますが,破産者が調停調書による債権を債権者名簿に記載することを失念したまま免責許可決定を得た事件について,債権者が当該債権につき調停調書作成以後免責許可決定から4年ほど経過するまで一度も請求しておらず,原告の債務不履行後免責申立の時まで六年が経過していたこと,破産の原因は当該債権の発生日以後の債権がほとんどであり,当該債権について免責不許可事由がないこと,当該債権は破産債権全体からするとほんの一部であること等を指摘して,非免責債権とした裁判例が存在します(神戸地裁平成元年9月7日)。