1 否認権が行使されたときの効果
弁護士の松山です。
破産手続において、破産管財人による否認権行使が認められるとどうなるのでしょうか。
詐害行為否認が認められると、原状回復が効果として定められています(破産法167条1項)。
破産者が破産直前に相場よりも著しく安い価格で財産が売却された場合に、その財産を破産財団に取り戻すケースが分かりやすいです。
もっとも、現物を取り戻すことが困難なことも多く、財産の金銭的評価をしたうえ、金銭的価値による回復も認められています(破産法168条4項)。
2 目的財産の価額算定の基準時
ところで、財産の価額は、時の経過によって変動しえます。
そのため、価額賠償請求がなされたときに返還すべき額は、どの時点の価額なのかが問題となります。
判例は、否認権が行使された時の価額とすべきとしており、学説の多数もこれを支持しているようです。
しかし、学説は多岐に分かれており、財産の処分時とする説や口頭弁論終結時とする説、否認権行使時を基本としつつ価値変動分を部分的に反映させる説などが唱えられています。
また、とくに暗号資産のように価値が大幅に変動する財産をも視野に入れようとすると、従来の議論では限界が生じる場面もあるようです。