高次脳機能障害で働けなくなった場合のQ&A
後遺障害の逸失利益とはなんですか?
交通事故に遭い、高次脳機能障害の後遺障害が残った場合、働けなくなるほど重度な場合もあります。
全く働けなくった場合はもちろん、就ける仕事が限定される場合もあります。
このように、将来にわたり労働能力の喪失ないし低下が継続するのが通常です。
そこで、高次脳機能障害により後遺障害等級が認定されれば、後遺障害等級に応じて、将来にわたる労働能力の低下による収入分の減少が賠償されます。
これが、後遺障害逸失利益です。
後遺障害逸失利益はどのように計算しますか?
後遺障害逸失利益の計算式は、基本的に次のように計算します。
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入額は、原則として、事故当時の現実収入額により算定します。
次に、労働能力喪失率についてです。
高次脳機能障害が後遺障害として認定される場合、1級、2級、3級、5級、7級、9級のいずれかとなりますが、自賠責保険では各等級について、次のとおり労働能力喪失率を定めています。
1級~3級 100%
5級 79%
7級 56%
9級 35%
労働能力喪失期間は、症状固定時から就労可能年限である67歳までとされるのが原則です。
ライプニッツ係数とは、将来にわたり発生する分も和解時あるいは判決時に一括で支払われることとなるため、中間利息を控除して計算する方法が慣行となっており、中間利息を控除するために用いられる係数がライプニッツ係数です。
後遺障害逸失利益はどのように支払われるのですか?
これまでは、後遺障害逸失利益が支払われる場合、前述したとおり、和解時あるいは判決時に一括で支払われることが慣行となっておりました。
これに対し、令和2年7月、後遺障害逸失利益について定期金賠償を認める画期的な最高裁判決が出されました。
この最高裁判決は、後遺障害逸失利益について、中間利息控除の結果実際の取り分が大きく減る一括払いではなく、将来にわたり、毎月(あるいは毎年)定期的に受けとる定期金賠償の形で支払いを受けることを認めました。
一見、被害者の受取額が増える定期金賠償による方が被害者にとって有利になるようにも思えます。
しかし、定期金によるのか、一時金によるのかは、ケースごとに慎重な検討が必要になりそうです。
なぜなら、定期金賠償のほうが、被害者が受け取れる金額が増えますが、被害者は、定期的に症状や収入状況に変化がないか、加害者側(保険会社等)から接触を受け続けなければなりません。
この負担ないしストレスは相当なものでしょう。
また、加害者側から、症状が回復したのではないか、収入を得ているのではないか等と主張され、後に減額されるというリスクもあります。
いずれの支払い方法が良いのかは、よくよく弁護士と相談しましょう。
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