離婚の際に2人で飼っていたペットをどちらがひきとるかはどのように決めるのですか?
1 基本的な考え方
可愛いペットは家族も同然ですが,民法上,ペットは物であり他の財産と同様に所有される対象です。
離婚時にどちらが引き取るかは,家具と同じように考えられ,基本的にはご夫婦で話し合って決めることになります。
ただ,以下のように,飼い始めた時期などによって,考え方が変わります。
2 婚姻前にどちらかが飼い始めていた場合
例えばそのペットを結婚前に妻が飼い始めて,結婚を機に連れて来ていたものであれば,妻の固有財産であり,そもそも離婚時の財産分与の対象になりません。
その場合,ペットは妻が引き取ることになるでしょう。
ただ,夫が引き取りを希望する場合,妻の側の了承を得て,夫が引き取ることもできます。
3 婚姻後に飼い始めた場合
ペットを飼い始めたのが婚姻後であった場合,ペットは離婚時の財産分与の対象となり,どちらが引き取るかは話し合いで決めなければいけません。
さて,ここまでは,そのペットを夫婦のどちらも「引き取りたい」と考えていた場合のお話です。
4 婚姻後に飼い始めた場合で,どちらも引き取りを拒否する場合
離婚を機に引越しや転職等,生活状況が変わることなどから,悲しいことですが夫婦のどちらも「ペットを引き取れない」と主張するケースもあります。
ペットは生き物ですから,不要な家具のようにすぐに処分することはできません。
ペット(愛護動物)の取り扱いは「動物の愛護及び管理に関する法律(以下,「動物愛護法」といいます。)」に定めがあり,遺棄すれば,処罰対象になります(動物愛護法44条3項)。
もちろん,家具やその他の不要品も適切な処分をしなければ,廃棄物の処理及び清掃に関する法律で取り締まり対象となります。
話し合いをし,どうしても夫婦のどちらも引き取りができない場合,他に引き取り手を探すしかありませんが,それも難しい場合には,最終的に各都道府県や市町村の担当課にペットの引取申請をすることになるかもしれません。
名古屋市の場合,飼えなくなった理由が適正と判断されれば,ペットの所有権を放棄し,名古屋市動物愛護センターに任せることもできます(但し,平成28年4月時点での取り扱いです。)。
5 犬の登録について
なお,飼い犬は狂犬病予防法により所有者の登録が義務付けられているため(狂犬病予防法4条1項),飼い始めた時に夫婦のどちらかが所有者として登録されているはずです。
離婚により,これまで所有者として登録されていないほうが犬を引き取ることになった場合には,登録の変更を忘れないように注意が必要です(狂犬予防法4条5項)。
6 弁護士への相談
ペットの引き取りについては,揉めることが多いため,感情的になってしまい,ご夫婦だけでは話し合いができない場合もあります。
そのような場合は,離婚に関する他の項目(慰謝料や子どもの親権など)と同じように,早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。
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