弁護士に自己破産を依頼している間にクレジットカードを使ってしまった場合
1 依頼している弁護士に黙ってクレジットカードを使って問題ないか
もともと複数の債権者からの借入れに頼って生活をしていた人が、借入れに頼らずに生活を立て直すことは簡単ではないと思います。
ただ、自己破産を弁護士に依頼した後に、クレジットカードを利用してしまうことは、結果として大きな問題となる可能性があります。
以下では、その理由等についてご説明いたします。
2 債権者平等の原則
自己破産は、債権者の同意の有無にかかわらず、強制的に債務の支払免除を受けられる手続きです。
これは、各債権者からみれば大きな不利益となるため、債権者に対する手続参加の機会を保障するなど、公平適正な手続、ルールに則って手続きが進められる必要があります。
そのような守るべきルールの1つが、「債権者平等の原則」です。
自己破産手続きを進めるにあたって、各債権者には、最低限平等に不利益を甘受してもらうということが求められています。
3 クレジットカード利用と債権者平等の原則違反
⑴ 特定の会社への返済や新たな借り入れ
まず、クレジットカード会社のうち、特定の会社に対してのみ返済を行うことは、その会社だけに利益を与えることになるため、債権者平等の原則に反します。
また、新たな借り入れをすることも、総債権額に変動をもたらすため、やはり認められません。
⑵ クレジットカードでの買い物
では、クレジットカードで買い物をすることはどうでしょうか。
クレジットカードを利用した買い物は、クレジットカード会社がカード利用者の代わりに代金を立て替えて支払い、後日、立替払金をカード利用者に請求するというものになります。
この立替払金の支払請求権も、債権者平等の原則に服する債権になります。
そのため、クレジットカードで買い物をした分の債権も返済をしてはいけないことになります。
その結果、特に破産準備中の場合には、「支払うつもりがないのにカードを使って買い物をしたのではないか」と評価され、クレジットカード会社から詐欺等で訴えられる場合もあります。
また、自己破産は、財産が残っている場合、財産を売却する等して現金化し、それを各債権者に平等に配当する手続でもあります。
破産することを決意した後にクレジットカードを利用し、それにより債務を負担する行為は、債権者が配当されるはずだった金額を減少させる行為にもなります。
このように、残った財産を分配する場面でも、クレジットカードを利用した事実が影響してしまいます。
4 違反が発覚した場合
上記のように、特定の債権者を優遇したり、配当額を減少させるような行為は、「免責不許可事由」となる可能性があります(参考リンク:名古屋地方裁判所・破産の手続き・自己破産の申立てを考えている方へ )。
免責不許可事由とは、文字通り、「債」務の「免」除について「不許可」となる事由です。
つまり、自己破産をして借金の支払い義務を免れようとしていたのに、クレジットカードを利用してしまったがために、最終的に借金の支払義務がなくならない可能性があるのです。
以上のような問題があることから、破産手続依頼後は、クレジットカードを使うことは絶対にしてはいけません。
5 弁護士への依頼時の注意点
弁護士に破産を依頼する際は、買い物等にしか使っていないクレジットカードのことも、借入先と同様に伝える必要があります。
実は債務が残っているという場合もあるので、念のため、既に使わなくなったクレジットカードについても伝えておく必要があります。