住宅ローンの滞納と個人再生
1 住宅ローンの滞納
自宅の住宅ローンの支払いを一定の期間滞納した場合、通常は住宅ローンの保証会社が保証債務を履行して、債務者の方へ保証会社から、一括で住宅ローン分の返済を求められます。
そこで、一括で返済できなければ、通常は不動産に付された抵当権が実行されて、競売手続が進んでいき、最終的に自宅を手放さなくてはなりません。
2 巻き戻し
このように自宅が競売にかかっているときに個人再生を行うとどうなるのでしょうか。
まず、住宅ローンの保証会社による保証債務の履行から6か月を経過する日までに個人再生手続の申立てを行い、その後に再生計画の認可決定が確定すれば、保証会社による保証債務の履行はなかったものとみなされます。
これを「巻き戻し」といい、債権は保証会社から、元々の債権者である借入れを行った金融機関などに戻ります。
3 抵当権の実行手続の中止命令
しかしながら、再生計画の認可決定が確定するまでは、保証会社が自宅の競売を申し立てるのを止めることはできません。
そのままでは、抵当権が実行されて、債務者の方の生活の本拠である自宅を手放さなくてはならず、今後の債務者の経済的再生を図ることが困難となってしまいます。
そこで民事再生法では、抵当権の実行手続の中止命令という制度が用意されています。
すなわち、裁判所は、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は住宅の敷地に設定されている抵当権の実行手続の中止を命令できるとされています(民事再生法197条1項)。
中止の期間は3~4か月と定められることが多いです。
4 中止命令後の手続
再生債務者は、個人再生を申し立てた裁判所から抵当権実行の中止命令を得たとき、その中止命令の謄本を、抵当権実行が申し立てられた執行裁判所に対して提出することで抵当権の実行を停止することができます(民事執行法183条1項7号)。
また、再生計画の認可決定の正本及び再生計画認可決定の確定証明書を執行裁判所へ提出することで、競売手続は取り消されます(民事執行法183条1項3号、同条2項)。
以上の手続を行い、認可された再生計画に従って返済を続けることで、一度競売にかけられたとしても自宅を手放さずに済みます。