弁護士から内容証明郵便が届いた場合の対応方法
1 内容証明郵便とは
内容証明郵便とは,郵便の方法の一つで,郵便の内容や発送した日付などを郵便局が証明してくれるサービスのことです。
また,配達証明を付けることもでき,そうすると相手方が受け取った日付も郵便局が証明してくれます。
2 内容証明郵便の法的効果
内容証明郵便には,それ自体で相手方に何かの権利を行使することができるようになったりするような通常の郵便と異なる効果はありません。
もっとも,郵便局が,内容と発送した日付,相手方が受け取ったことを証明してくれるのですから,相手方が受け取っていないという言い逃れはできなくなり,相手方に対して特定の意思表示をしたことを証明する効果があるのです。
強いていえば,法律上,何らかの効果を発生させるために意思表示が必要とされているものや,確定日付を得ることが必要なものについて,その意思表示をしたことを証明する効果,確定日付を得られる効果,があるのです。
その他,内容証明郵便が届くことによる心理的圧迫を与える,という副次的な効果もあります。
3 内容証明郵便が用いられる具体的なケース
⑴ 契約の解除,取消し,時効の中断など
たとえば,意思表示をしたことを証明する効果を求めて行われるものには,契約の解除や取消し,時効の中断などがあります。
法律上は,契約を解除ないし取消しできる場合がありますが,その場合,相手方に解除の意思表示をすれば足ります。
本来的には,口頭での意思表示でも足りますし,普通郵便などでもよいのです。
しかし,そのような方法だと,解除の意思表示をしたことの証拠は通常残らないか,残ったとしても証明力の弱い証拠になってしまいがちです。
そうすると,相手方から契約は解除されていない,契約どおり料金を支払え,などと言われたときに,契約が解除されていることを証明できず,相手方の主張が認められてしまいかねません。
そのような事態を防ぐため,内容証明郵便という証拠の残る形で解除の意思表示をするのです。
⑵ 未払金の請求,損害賠償請求など
未払金の請求や,損害賠償の請求の際には,⑴とは異なり,請求をしたことを積極的に証拠に残しておく必要性はそこまで高くありません。
しかし,内容証明郵便を送付することで,相手方にプレッシャーをかけられる場合もあります。
普通の郵便ではなく内容証明郵便が届いたら,こちらの本気度も伝わりますし,通常の事態ではないと感じられるため,普通の人は落ち着きませんし,内容的にも裁判を起こされるのではないか,と危惧する人が多いはずです。
そのため,未払金の請求や,損害賠償の請求を行うにあたり,あえて相手方に本気度を示すため内容証明郵便を送ることがあるのです。
⑶ 債権譲渡の通知など
法律的に,確定日付があることが要件になっている場合の,確定日付を得るために内容証明郵便を利用することもあります。
たとえば,債権譲渡の通知などがそうです。
4 弁護士から届いた内容証明郵便を無視するとどうなる?
内容証明郵便の効果は,先ほど述べたとおり,郵便の内容や日付などを証明することにあるため,内容証明郵便が送られてきたからといって,通常,普通郵便によるものとは異なる何かの法律的な効果が生じるわけではありません。
しかし,解除や催告,請求などの何らかの意思表示を証明し,その後に法的手続をとれるようにしているのですから,その後,さらに本格的な紛争になっていく,ということは想定できます。
多くの場合,弁護士から送られてくる内容証明郵便には,回答の期限や支払の期限などが設けられています。
通常,弁護士は,期限を過ぎた場合には,裁判などの法的手続をとれるよう準備をしている可能性が高いです。
そのため,弁護士から届いた内容証明郵便を無視し続ければ,ある日,突然裁判所から訴状などが届くことがあるかもしれません。
5 弁護士から内容証明郵便が届いた場合の対応方法
今後,裁判などに発展するかもしれない内容証明郵便ですが,早めにきちんと対応することで,裁判などにはならずに交渉で解決できる可能性もあります。
まずは,内容証明郵便の中身をきちんと確認し,そこに書かれていることが事実なのか,納得できない部分と認められる部分とはどこなのか,確認し,できる限り早期に弁護士に相談することが肝心です。
弁護士から内容証明郵便が届いた時点で,相手方は法律の専門家ですから,自分の反論が法的に成り立つのか,成り立つとしてどのような資料が必要なのか,成り立たない場合にはどう対応したらよいのか,といったことをこちらも法律の専門家に確認して準備しておく必要があります。
内容によっては時間が経つと致命的なケースもありますので,弁護士から内容証明郵便が届いた場合には,できる限り早期に弁護士に相談されることをお勧めします。