通勤災害として労災が認められるケース
1 通勤中の事故でも労災が認められる場合がある
労働者が業務中に事故に遭った場合、労働上の災害として、労働者災害補償保険(「労災」と言われることが多いです。)を使える場合があるということをご存知の方は多いかと思いますが、通勤時間中に事故に遭った場合でも、労災を使えることがあるのをご存知でしょうか。
2 通勤災害に該当するための要件
通勤災害については、労働者災害補償保険法7条1項3号、2項、3項に規定されており、まとめると以下のとおりです。
- ①就業に関する移動であること
- ②以下の(ⅰ)~(ⅲ)のいずれかに該当すること
- (ⅰ)住居と就業の場所との間の往復
- (ⅱ)就業の場所から他の就業の場所への移動
- (ⅲ)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)
- (ⅲ)はわかりづらい表現ですが、転任で単身赴任することになったような場合に、元の家と単身赴任先の家との間の移動がこれに該当する場合があります。
- ③合理的な経路及び方法による移動であること
- 必ずしも最短ルートである必要はありませんが、合理的な理由なく著しい遠回りをしているようなケースは、この要件を満たさないものと考えられます。
- ④業務の性質を有さないこと
- 移動自体が業務といえる場合には、通勤災害ではなく、業務災害となります。
- ⑤移動の経路を逸脱し、又は中断していないこと
- たとえば、会社からの帰り道、通勤ルートとは反対方向の商業施設へ遊びに出掛ける途中で事故にあったような場合、基本的には労災の対象になりません。
- 一方、会社から自宅までの帰り道に、コンビニで日用品の購入をしたり病院に寄ったりした場合、コンビニや病院が会社から自宅までの通勤経路からはずれていたとしても、それらが生活上必要な行為で、最小限度のものである場合には、通勤ルートからはずれている間や往復を中断している間をのぞき、通勤として取り扱われると考えられています。
- これまでに裁判所で争われた事例の中にも、終業後歩いて義父宅に立ち寄り義父を介護した後に歩いて帰宅する途中、通勤ルート上の交差点で発生した交通事故について、通勤災害性が肯定された事例があります。
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