任意整理のメリット・デメリット
1 はじめに
任意整理とは、個人の方が行う債務整理の手段で、貸金業者や信販会社等の金融業者と個別に交渉して返済方法を取り決める手続きです。
任意整理は、主に月々の返済金額を減らすことを目的として行われます。
ここでは、任意整理のメリットおよびデメリットについてご説明します。
2 任意整理のメリットについて
⑴ 弁護士費用が比較的割安である
金融業者との任意整理については、実務の慣行も固まってきており、その交渉も実務の慣行に則って行われます。
そのため、例えば慰謝料請求のような通常の交渉事件と比較し、費用は割安になっています。
また、数社程度の任意整理であれば、通常は自己破産や個人再生の弁護士費用よりも費用は低額になります。
⑵ 業者を選択して行うことができる
任意整理では、手続を行う業者を選択することができますので、自動車ローンや住宅ローンの債権者を除外して手続きを進めることができる場合もあります。
自動車ローンや住宅ローンを除外しておけば、その債務の返済を継続している限り、自動車を引き揚げられたり、自宅を競売される可能性を少なくすることができます。
⑶ 手続きにかかる期間が比較的短期である
任意整理の交渉は比較的短期間で終了します。
通常は1、2週間程度です。
合意書の作成まで入れても1か月はかからないことがほとんどです。
なお、上記の期間には弁護士費用の準備や、支払可能性についてのチェックをする期間は含まれていません。
弁護士費用の準備に例えば3か月かかった場合(弁護士費用前払いの場合)は、解決までに4か月程度必要となります。
⑷ 場所に縛られない
個人再生や自己破産の場合は、原則として居住地を管轄する裁判所に申し立てなければなりません。
他方、任意整理は各金融業者との個別交渉ですので、例えば関東に居住し定期的に名古屋に出張に来ているという場合、名古屋の弁護士に依頼してもとくに問題はありません(関東の方が名古屋の弁護士に自己破産や個人再生を依頼することも可能ですが、裁判所等に赴く際の日当や交通費などの負担が発生します)。
⑸ 書類の準備が少ない
自己破産や個人再生では、住民票や源泉徴収票などの多数の書類を用意し、裁判所の書式に従った家計表等も作成しなければなりませんが、任意整理ではその必要はありません。
3 任意整理のデメリットについて
⑴ 負債はほとんど減らない
任意整理は、主に月々の返済金額を減らすことを目的として行われる手続で、手続を行う時点で残っている負債を36回から60回程度で分割して返済する合意がなされることが通常です。
つまり、減額(免除)されるのは将来利息のみ、ということになるのがほとんどです。
これに対し、個人再生の場合は、返済すべき金額は負債額よりも大幅に圧縮されることが通常です。
⑵ 任意整理に応じない業者がある
通常の金融業者は任意整理の実務慣行に沿って対応してくれますが、任意整理に全く応じてくれない業者も存在します。
この場合、当該業者を除外すると任意整理の目的を達することが困難であれば、個人再生か自己破産を選択せざるを得ないこととなります。
⑶ 合意内容の予測が難しい場合がある
任意整理を行う業者との取引期間が比較的短期の場合は、36回よりも少ない返済回数での合意となったり、60回を想定していたものの36回での合意となることがあります。
このような場合は、任意整理を行う前よりも返済金額が増えることがあります。
ただし、将来利息はカットしてくれるのが通常です。
これに対して、個人再生や自己破産の場合は、法律で手続きが定められていますので、その効果は容易に予測可能です。
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