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相続人の廃除・欠格

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2024年5月27日

1 相続人の廃除

⑴ どのような手続きか

相続人の廃除は、被相続人が生前または遺言にて家庭裁判所に請求することにより、審判で特定の相続人の相続権を失わせるという手続きです。

その相続人に、のちに説明する欠格事由ほどではないが、相続的共同生活関係を破壊するとみられるような一定の事由があり、被相続人がその相続人に相続させることを欲しない場合に行われます。

廃除の対象となる相続人は、遺留分を有する推定相続人に限られています。

遺留分を有する推定相続人とは、被相続人の兄弟姉妹・甥姪以外の相続人(子や親など)のことです。

民法が定める廃除事由は、推定相続人が被相続人に対して虐待し又は被相続人に重大な侮辱を与えたとき、もしくは、推定相続人にその他の著しい非行があったことです。

例えば、相続人が被相続人に日常的に暴力をふるっていた場合や、相続人がギャンブルなどで被相続人の財産を浪費していた場合、被相続人のハンコを悪用して、勝手に連帯保証人にしていた場合等に、廃除事由に該当することがあります。

⑵ 手続きの流れ

家庭裁判所に相続人廃除の審判を求める場合、この廃除請求権は、被相続人の一身専属権であると解されており、他人が代理行使することは許されません。

廃除の審判が確定すると、被廃除者である相続人は、直ちに相続権を失います。

なお、実務的には、相続人廃除は必ず認められるものではなく、社会的に許容できない程度の虐待や侮辱、非行があることが必要になります。

また、廃除が認められるまでには1年以上かかる場合もありますので、特定の相続人に財産を渡したくない場合は、まずは遺言書を作成し、その相続人に財産が渡らないように対策をしておいた方が良いでしょう。

2 相続人の欠格

相続人の欠格は、法定相続人が相続に関して不正な利益を得ようとして不正な行為をし、またはしようとした場合に、そのような法定相続人は、法律上当然に、相続人の資格を失うことをいいます。

その具体的内容は、民法に規定されています。

  • ・故意に被相続人あるいは相続について先順位・同順位の相続人を殺し、または殺そうとして、刑に処せられた者
  • ・被相続人が殺害されたことを知ったにもかかわらず、これを告発せず、又は告訴しなかった者
  • ・詐欺又は強迫によって、被相続人が遺言を作成したり、既にしてある遺言を取り消したり、変更したりすることを妨げた者
  • ・詐欺又は強迫によって、被相続人に遺言をさせたり、既にした遺言を取り消させたり、変更させたりした者、遺言書を偽造したり、既にある遺言書を変造したり、破棄したり、隠匿したりした者

なお、実務的には、欠格事由に該当するケースはあまり多くありません。

3 相続人の廃除・欠格が認められた場合の相続関係

相続人の廃除・欠格が認められた場合、当該相続人は、相続権を失いますので、その相続人は被相続人の遺産を相続することはできません。

もっとも、相続権を失った相続人に子がいる場合は、代襲相続となり、その子が相続人となります。

例えば、長男に相続人の廃除が認められた場合、長男の相続する権利は長男の子に移ります。

そのため、長男だけでなくその家族にもなるべく財産を渡したくない場合は、遺言書を作成し、長男以外の家族に相続させるようにするなど、対策を取っておく必要があります。

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